この記事でわかること

Q. 内部留保とは何ですか?
A. 内部留保とは、法人が稼いだ利益のうち、役員報酬や配当として外部に流出させず、法人内に蓄積した資金のことです。貸借対照表上は「利益剰余金」として表示されます。将来の投資や不測の事態への備えとして活用できます。
Q. 利益を法人に残すメリットは何ですか?
A. 主なメリットは、①法人税率(最大34%)が個人の所得税率(最大55%)より低い場合に節税になる、②将来の物件購入資金として活用できる、③金融機関からの信用が上がる、④不測の事態への備えになる、などがあります。
Q. 利益を全て内部留保にしてもいいですか?
A. 可能ですが、最適とは限りません。役員報酬を支払うことで所得分散効果や給与所得控除を活用できます。また、法人に資金を寝かせておくより、個人で運用した方が有利な場合もあります。法人税率と個人の所得税率を比較して判断しましょう。
法人での利益留保|内部留保の活用方法
法人戦略 公開: 2025.01.15

法人での利益留保|内部留保の活用方法

内部留保とは

内部留保とは、法人の利益から税金を支払った後に、法人内に蓄積される資金のことです。

役員報酬や配当として外部に流出させず、法人の資産として保持することを「利益を留保する」といいます。

利益留保のメリット

1. 税率のメリット

法人税率は最大約34%であるのに対し、個人の所得税・住民税は最大55%です。

所得金額個人税率法人実効税率差額
500万円30%22%▲8%
800万円33%24%▲9%
1,500万円43%34%▲9%
3,000万円50%34%▲16%

高所得になるほど、法人に利益を残す方が税負担が軽くなります。

2. 将来の投資資金

内部留保は、将来の物件購入や事業拡大の資金として活用できます。

活用方法
2棟目以降の物件購入資金
大規模修繕の準備金
新規事業への投資
M&Aや事業買収

3. 金融機関からの信用

内部留保が厚い法人は、財務体質が良いと評価され、融資を受けやすくなります。

評価項目内部留保の影響
自己資本比率上昇(好評価)
返済能力向上
信用格付け上昇

4. リスクへの備え

不測の事態(空室増加、大規模修繕、災害など)に対する備えになります。

利益留保のデメリット

1. 法人税がかかる

内部留保する利益には法人税等が課税されます。

利益1,000万円の場合
→ 法人税等:約340万円
→ 内部留保:約660万円

2. 個人で使えない

法人に留保した資金は、そのままでは個人の生活費や消費に使えません。

3. 機会損失

法人に資金を寝かせておくより、個人で投資運用した方が有利な場合もあります。

4. 相続時の課題

内部留保が多いと法人の株式評価額が上がり、相続税負担が増える可能性があります。

留保vs還元の判断基準

法人に留保すべきケース

状況理由
個人の所得税率が高い(43%以上)法人税率の方が低い
近い将来に物件購入予定投資資金として活用
大規模修繕が控えている修繕資金として準備
融資を受ける予定信用力向上のため

個人に還元すべきケース

状況理由
個人の所得税率が低い個人で受け取った方が税負担軽い
当面大きな支出予定がない法人に資金を寝かせる意味が薄い
生活資金が必要個人で使える資金確保
相続対策を重視株式評価額を抑える

内部留保の活用方法

1. 次の物件購入の頭金

内部留保を自己資金として、2棟目以降の物件購入に活用。

2. 修繕積立

計画的に修繕費用を積み立て、大規模修繕に備える。

3. 保険の活用

逓増定期保険などで資金を運用しながら、退職金の準備も行う。

4. 役員退職金の原資

役員退職金は損金算入できるため、出口として有効。

役員退職時に退職金を支給
→ 法人の損金(経費)になる
→ 退職金は退職所得として有利な税制が適用

シミュレーション例

前提条件

  • 法人利益:1,500万円
  • 代表者の他の所得:なし

パターン1:全額留保

項目金額
法人利益1,500万円
法人税等(34%)▲510万円
内部留保990万円
個人の手取り0円

パターン2:役員報酬700万円

項目金額
役員報酬700万円
法人利益800万円
法人税等(24%)▲192万円
内部留保608万円
個人所得税・住民税▲100万円
社会保険料(本人)▲100万円
個人の手取り500万円
税金合計292万円

パターン3:役員報酬1,200万円

項目金額
役員報酬1,200万円
法人利益300万円
法人税等(22%)▲66万円
内部留保234万円
個人所得税・住民税▲240万円
社会保険料(本人)▲130万円
個人の手取り830万円
税金合計306万円

→ 税金だけ見ればパターン2が最も有利

まとめ

  • 内部留保とは、法人税を払った後に法人に残す利益のこと
  • 法人税率(最大34%)が個人所得税率(最大55%)より低い場合に有利
  • 将来の投資資金、修繕準備金、融資の信用力向上に活用可能
  • 役員報酬とのバランスを考え、税金+社会保険の総合負担で判断
  • 最適なバランスは状況によって異なるため、毎年見直しを

内部留保と役員報酬のバランスは、法人の状況や個人のライフプランによって最適解が変わります。税理士と相談しながら、毎年の方針を決めましょう。

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