不動産業界で働いていると、考えさせられる場面に出くわします。
近所で4階建ての賃貸マンションが建設中です。鉄筋コンクリート造でエレベーターなし。建てているのは、以前同じマンションに住んでいた年配の女性だと妻から聞きました。
「相続対策に賃貸住宅を建てませんか」という営業を受け、「何も分からない」と言うと「すべてお任せください」と。書類に署名捺印する以外、ほとんど何もしていないそうです。
この話を聞いて、私は暗い気持ちになりました。
このエリアは今、若い世帯が流入していますが、行政の予測では10年後から少子化が進みます。住民の年齢層が上がれば、エレベーターなしの4階建ては敬遠されます。周辺には同時期に建った類似物件が並んでいます。
30年後、ローンが残った状態で子どもたちが相続したとき、その建物にどれだけの価値があるでしょうか。相続税は回避できても、毎月の持ち出しに苦しむことになりかねません。
業者がそこまで説明したとは思えません。説明すれば契約が取れないからです。
メリットしか語らない営業
これは相続対策の新築マンションに限った話ではありません。
「築古木造で節税できます」「4年で全額償却できます」
中古不動産の営業トークも同じ構造です。節税効果は強調するが、償却終了後のキャッシュフロー悪化、売却時の課税、空室リスクの説明は曖昧。購入者が困るのは5年後、10年後です。その頃、担当営業は別の会社にいるかもしれません。
動く金額が大きい業界では、目の前の成約が最優先になりがちです。長期的なリスクより、今月の数字。それが現実です。
私はこの業界にいるからこそ、リスクを正直に伝える場所が必要だと感じていました。
エンジニア×宅建士という視点
私は35年間、システム開発の現場に立ち続けてきたエンジニアです。同時に宅地建物取引士として不動産仲介業を営んでいます。
エンジニアの仕事は、論理的に物事を分解し、リスクを洗い出すことです。「最悪のケースは何か」「どこで破綻するか」を常に考えます。この思考習慣を不動産投資の情報発信に活かしたいと考えました。
不動産営業マンは「売ること」が仕事です。リスクを強調すれば売れません。しかしエンジニアにとって、リスクを隠すことは設計ミスと同じです。後から必ず問題が噴き出します。
営業が苦手だからこそ
40代半ばでIT業界から不動産業界へ転職しました。売買仲介の仕事は、物件と顧客のマッチング、橋渡しです。しかし不動産業界はいまだに電話営業が中心。正直、営業電話は苦手です。
相手の都合も考えず電話をかけ、興味がないと分かっていても粘る。あのスタイルは私にはできません。
エンジニアで営業が苦手な私にできること。それはネットでの情報提供とサービス構築でした。必要な人が自分で情報を取りに来る。その仕組みを作ることなら、私の得意分野です。
築古物件情報が集まる現実
宅建業を始めると、業者間の営業電話が日常になります。「買ってください」だけでなく「売らせてください」「この物件を売ってください」という客付け依頼も頻繁です。
寄せられる物件の中に、築古木造アパートが少なくありません。しかも稼働状況が良好なものが多い。最初は意外でした。築22年超の木造といえば、老朽化したイメージがあったからです。
調べてみると、バブル後に建てられた木造アパートは、それ以前とは品質が大きく異なることが分かりました。
バブル後の木造は別物
1990年代以降、プレカット材や金物工法が普及し、施工品質が安定しました。2000年の建築基準法改正で性能規定化が進み、準耐火構造の木造賃貸が標準になっています。
「木造=22年で寿命」ではありません。バブル後に建てられた物件は、構造的な信頼性が高く、築30年を超えても現役で稼働している物件は珍しくありません。
そもそも、古い=ボロいではないのです。築年数が経っていても、適切なメンテナンスと大規模修繕を行っていれば建物は長持ちします。外壁塗装、屋根補修、給排水管の更新。これらを計画的に実施している物件と、放置されてきた物件では、同じ築30年でもコンディションがまったく違います。
今はリノベーションも市民権を得ています。内装を現代の入居者ニーズに合わせて刷新すれば、築古でも競争力のある物件に生まれ変わります。築年数だけで判断するのは、もったいない話です。
新しい価値の発見
当社のメイン事業は未公開の超高級物件です。数十億円規模の土地取引が中心で、築古木造アパートは「うちの扱う物件ではない」と考えていました。
しかし改めて市場を見たとき、可能性に気づきました。高所得者の節税ニーズは確実に存在する。品質が向上したバブル後築の物件も流通している。そして私のもとには、日々物件情報が集まってくる。
この3つを掛け合わせれば、価値あるサービスが作れる。
エンジニアだからできること
このサイトは私自身がAIと開発スキルを組み合わせて構築しています。一般的にこのようなサービスを作るなら、外部に発注するしかありません。数百万円の開発費と、数ヶ月の期間が必要でしょう。
しかし35年のエンジニア経験とAIを活用することで、超高速に開発・改善できます。ユーザーの声を聞いて、翌日には機能を追加する。これが当社の最大の強みです。日々アップグレードを続けています。
このサイトの約束
4年償却ナビでは、築古木造アパートの物件情報を配信しています。
- 4年償却の条件を満たす厳選物件
- 利回り・立地・建物状態の詳細情報
- 想定されるリスクの明示
私たちはリスクを隠しません。デッドクロス、売却時の課税、空室リスク。すべて説明した上で、投資判断をしていただきたい。
節税は手段であり、目的ではありません。
それが4年償却ナビの基本姿勢です。