法人戦略 公開: 2025.01.15
役員報酬の最適設計|所得分散による節税
役員報酬とは
役員報酬とは、法人が役員(取締役、代表社員など)に支払う報酬のことです。
法人の損金(経費)として処理できるため、法人と個人のバランスを考えた設定が節税のポイントになります。
役員報酬の税務ルール
損金算入の要件
役員報酬を法人の損金として認められるには、以下のいずれかの形式である必要があります。
| 形式 | 内容 |
|---|---|
| 定期同額給与 | 毎月同額を支給 |
| 事前確定届出給与 | 事前に届出した金額を支給(賞与等) |
| 業績連動給与 | 利益に連動して支給(上場企業向け) |
資産管理会社では、定期同額給与が一般的です。
変更のタイミング
役員報酬の変更は、事業年度開始から3ヶ月以内に行う必要があります。
| 変更タイミング | 損金算入 |
|---|---|
| 期首から3ヶ月以内 | 全額OK |
| 期中の増額 | 増額分は損金不算入 |
| 期中の減額 | 原則OK(一定の理由が必要) |
役員報酬の最適額の考え方
法人税と所得税のバランス
| 項目 | 法人に残す | 個人に支払う |
|---|---|---|
| 法人税率 | 800万円以下:約22% / 800万円超:約34% | - |
| 所得税率 | - | 累進課税(15〜55%) |
最適化の基本方針
- 法人所得800万円までは法人税率が低いため、法人に残す
- 800万円を超える部分は、役員報酬として支払い、給与所得控除を活用
シミュレーション例
前提:法人の利益が年間1,500万円の場合
パターン1:役員報酬0円
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 法人所得 | 1,500万円 |
| 法人税等(概算) | 約420万円 |
| 税金合計 | 約420万円 |
パターン2:役員報酬700万円
法人
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 法人所得 | 800万円 |
| 法人税等(概算) | 約200万円 |
個人
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 給与収入 | 700万円 |
| 給与所得控除 | ▲180万円 |
| 課税所得 | 520万円 |
| 所得税・住民税 | 約100万円 |
合計:約300万円(節税効果:約120万円)
パターン3:役員報酬1,000万円
法人
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 法人所得 | 500万円 |
| 法人税等(概算) | 約120万円 |
個人
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 給与収入 | 1,000万円 |
| 給与所得控除 | ▲195万円 |
| 課税所得 | 805万円 |
| 所得税・住民税 | 約180万円 |
合計:約300万円(パターン2と同程度)
社会保険料の考慮
役員報酬を支払う場合、社会保険料が発生することを忘れてはいけません。
社会保険料の負担
| 保険種別 | 会社負担 | 個人負担 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 健康保険 | 約5% | 約5% | 約10% |
| 厚生年金 | 約9% | 約9% | 約18% |
| 合計 | 約14% | 約14% | 約28% |
※標準報酬月額に上限あり(厚生年金は月額65万円が上限)
社会保険料を含めた最適化
役員報酬が高すぎると、社会保険料の負担も増えます。税金と社会保険料の合計で考える必要があります。
| 役員報酬 | 税金 | 社会保険料(会社+個人) | 合計負担 |
|---|---|---|---|
| 500万円 | 約80万円 | 約140万円 | 約220万円 |
| 700万円 | 約100万円 | 約180万円 | 約280万円 |
| 1,000万円 | 約180万円 | 約220万円 | 約400万円 |
所得分散による節税
配偶者を役員にする
配偶者を役員にして報酬を支払うことで、所得を分散し、累進税率の影響を抑えられます。
例:役員報酬1,000万円を分散
| パターン | 本人 | 配偶者 | 税金合計 |
|---|---|---|---|
| 本人のみ | 1,000万円 | 0円 | 約180万円 |
| 分散 | 600万円 | 400万円 | 約140万円 |
節税効果:約40万円
注意点
- 配偶者が実際に業務に従事している必要がある
- 過大な報酬は否認されるリスクあり
- 103万円を超えると配偶者控除が使えなくなる
役員報酬設定の手順
ステップ1:法人利益の予測
今期の不動産所得、経費を予測し、法人利益を見積もる。
ステップ2:税率のシミュレーション
複数の役員報酬パターンで、法人税と所得税の合計を計算。
ステップ3:社会保険料の考慮
社会保険料も含めた総合的な負担を比較。
ステップ4:株主総会・社員総会での決議
期首から3ヶ月以内に役員報酬を決定し、議事録を作成。
まとめ
- 役員報酬は法人と個人の税負担のバランスで決める
- 法人所得800万円までは法人に残し、超過分を役員報酬に
- 社会保険料の負担も考慮して最適額を設定
- 配偶者への所得分散でさらに節税可能
- 役員報酬の変更は期首3ヶ月以内に行う
役員報酬の設計は税理士と相談し、毎年見直すことをおすすめします。


